2004-01-27 08:12 検問前 真壁啓一 迷宮街は街から外部を護るために出入り口一つを残して壁に囲まれている。出る者はそこで簡単な荷物のチェックを受けた。真壁啓一(まかべ けいいち)は屈託なくバッグを渡し、背後を振りかえった。 見慣れた街並み。 もう見ることのない街並み。 「はい、いいですよ」 かけられた声を無視してじっと街を眺めていた。さあ、ここで振り返ったらもう二度と街は見ない。この街は昨日の中にうずめてしまう。うずめてしまおう、全部。 係員は声をかけずに真壁をそっとしておく。