「はーいお次はー!」
拡声器の声が会場の喧騒を圧した。しん、と場内が静まる。
「Aグループで真壁啓一(まかべ けいいち) V.S. 小笠原幹夫(おがさわら みきお)の試合ですよー! 注目、注目ー!」
突然のそのアナウンスに真壁は立ちすくんだ。今までこんな紹介はなかったはずだ。注目のものだけは知らせることになっていたのかもしれない。であれば、自分のカードは注目の一戦なのだ。すこしはギャラリー増えるかな、と見渡したらすでに人垣ができていた。背伸びすると、どうやら他の会場も一時試合を中止しているらしい。そりゃちょっと大げさすぎないか、と思ったがお祭りは嫌いではない。歓声に対して手を高く差し上げた。観客がどよめく。楽しそうに手を叩いている真城雪(ましろ ゆき)、その隣りに仲間の女戦士を発見してそちらに歩いていった。
「がんばれ! 真壁さん! 一矢報いろ!」
一矢報いろか、と苦笑する。笠置町翠(かさぎまち みどり)は出稽古に赴いた先で真壁の対戦相手である小笠原を間近で見ているはずだ。何かヒントはないだろうか?
「んーとね、タイプは真壁さんと同じくアウトファイターだけど、リーチと筋力とテクニックは向こうが上、スピードと反射神経は真壁さんが上だよ」
「リーチ長いよなあ」
ちらりと視線を送る。身長は180cmくらいでこの街の前衛では平均的だが、手足が非常に長い。手足の長さなら津差と同じだけありそうだ。
「懐に飛び込む手だね」 翠の言葉にうなずく。
よーし行ってこい! と女帝が背中を強く叩く。力を注がれた気がする。