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「巴でございます」
『あ、お母さん? 麻美です』
「麻美! おまえまったく連絡よこさんと、元気にしてたの?」
『うん、元気。あのさ、今度の日曜日にちょっと帰ろうかと思ってるんだけど、二人ともいる? お兄ちゃんもいたほうがいいかも』
「なに、服買いすぎてお金でもなくなったの?」
『お母さん、それひどいよ』
「ひどいもんかね。たまに家に帰ってくるとお父さん連れ出して洋服買ってもらって、おまえもそろそろ真面目に将来のこと考えないといけないよ」
『そういうの苦手なんだけどなー』
「いいかい、女ってのはクリスマスケーキと一緒なんだよ。25過ぎれば半額、半額って値段が下がってくもんさ。そろそろ孫でも抱かしてもらえないかねえ」
『孫って…・…お兄ちゃんのところに三人もいるじゃない』
「だーめよー、あの子たちは。律子さんに遠慮しちゃってやっぱり面倒見ちゃうから。おばあちゃんなんてのは面倒は見ないでかわいがるだけしていたいの。それには実の娘じゃないと」
『お母さん、そういう発言が娘を結婚から遠ざけてるって気づいてる?』
「周りが何を言おうがダメな子はダメよ。今更親のせいにしないで」
『…・…あたしはダメな子だったのか。とにかく、ご希望どおりにひとり男の人を連れて行くから』
「…・…え? それって」
『そう。そういうことだから、一応おもてなしの用意しておいてよね。あと、顔を見てびっくりしちゃダメだよ』
「…・…不細工なのかい?」
『うーん。不細工よりもタチが悪いかな。まあ、あたしもお母さんの娘だったってことさ。じゃあ頼むね』
「ちょっと、麻美」
『なに?』
「おまえ、脅されてるとかじゃないよね」
『大丈夫。自分で選んだことだと思う。あたしもまだ信じられていないんだけど』