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パスワードが違います。
画面に映ったその文字に首をかしげた。そして思い当たる。仲間へ公開するためにパスを変えると電話で言っていたし、新しいパスはメールで送られていたはずだ。メールソフトを立ち上げ、受信フォルダの一番上のものをクリックした。太字になっている未読のメールのタイトルは「新パス」というもの。
頭ではわかる。自分の名前、真壁の名前、そして二人がはじめて結ばれた日を組み合わせたパスなどを他人に教えられたら困ってしまう。だから当り障りのない真壁の名前と誕生日を組み合わせたものでいいのだと頭ではわかる。でも。
――今日はダメだ。今日はどうしても新しいパスを打ち込む気になれない。キーボードのシャットダウンボタンに手を伸ばす。明日になったらこの気持ちも治まっているだろう。
きっと。