今日から迷宮街内部限定で日記の一般公開だ。とりあえずは部隊の仲間たちにパスを教えて見てもらっている。みんなにやにやしたり奇声をあげながら読んでいた。まあ、読み返してみると密度濃く行動した相手は翠以外にはいないし、彼らには懐かしい日々を再確認するようで楽しいのだろう。問題の翠は青蓮院で泣いているところを見られたと知って真っ赤になっていた。こまごまと隠してもらいたいなあといわれたのでそれは対応するつもり。仲間たちの検閲が終わったら、今度は他の探索者に広めていこう。
ふと思ったのは今泉くんのところをどうするかだけど、これはもう神田さんや織田さんとかに訊くしかないんだろうな。青柳さんは、いま(小林さんが)結婚生活で幸せになっていれば死を知っても大丈夫だろうと言っていたけど。
これは一般に開放するべきだと思う、という児島さんの言葉に励まされる。明日死んでも誰かが知っていてくれると思えるのは励みになる、だそうだ。
その後俺が抜けた後はどうしようという話になった。そこで児島さんも現在就職活動中で、おそらく四月からは勤めだすという話を聞く。就職活動といっても以前勤めていた製紙会社の営業さんに戻るという話みたい。俺が今月末、児島さんが三月中ごろと一気に二人抜けるわけだ。
俺が抜けた後どうしよう、とこれまでもおぼろげに考えていた中では進藤典範(しんどう のりひろ)くんを引き抜くといいかと思っていたけど、彼は自分の部隊の統括が面白そうで脈はなさそう。それよりは、ゴンドラの設置でもう一度がんばってみようかと思う人が第二層でくすぶっているあたりにいるだろうから、その人たちに募集をかけようという話になった。
俺がやめるという話をみんな喜んでくれて、気が早いけれど、『出所祝い』のパーティーの話になった。「腕によりをかけて鍋をつくるよ!」 と葵。え? お店じゃないの? 「あたしも手伝うよ!」 と翠。え? 食えるものが出てくるの? そんな話で終始した。別に裏切り者とか落伍者とか言われても気にしないけど、祝ってくれるのはやっぱり嬉しい。
一月二三〜二六にはゴンドラの設置工事がある。きちんと探索者の合意が取れていれば俺たちも作業や警備に参加する予定だ。二六日、星野さんだか真城さんだかが最初のゴンドラ乗車者になるのを見届けて二七日に帰ろうと思う。それまでに京都の観光をしつくしておかないと。