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本日の探索者が使用した剣とツナギが大量に運ばれてくる。山積みになったそれを目の前にして片岡宗一(かたおか そういち)は二人の若者に視線を送った。一人がタグを読み上げつつそれを片岡が見やすいように掲げ、片岡が決めた担当の鍛冶師をもう一人がタグのコードとともに記入する。各鍛冶師の能力に過不足なく、労働量に不公平が出ないように割り振らないと片岡の主任としての信頼が問われる難しい仕事だった。これが最後の便、進藤典範(しんどう のりひろ)という戦士の鉄剣を自分担当に割り振ってから、他にないかと声をかけた。ありませんとの答えにそうかとだけ答える。
時間外労働をしてまで重量とフォルムを決定した二本の剣。二刀流になるんだという女は確か今日が探索の日だったはずだ。それがどうして鍛冶棟に運ばれてこない?
推測できる原因は四つあった。一つはもちろん、今日なんらかの理由で探索を行わなかったということ。一つはやはり一刀に戻し、そのために気づかなかったというもの。一つは一本あるいは両方ともが損害が軽微で片岡の判断を仰ぐまでもなく分類されたということ。そして一つは次回からもう必要としなくなったということ――やめたか、死んだか。
それ以上考えるのをやめた。彼の肩には依然として350人を超える人間の命がかかっているのだから。