トーナメントを書き出した模造紙の前で進藤典範(しんどう のりひろ)は立ちすくんだ。寸前まで楽観視していた。訓練場では自分はそれなりだと理解している。優勝はもちろんムリでも組み合わせ次第なら二回戦くらいまで進めるのではないか? そう思っていた。しかしそれも自分の組み合わせを見るまでだった。トーナメントの一番最後、一回戦は同じ時期に参戦した戦士でたいしたことはない。しかし勝ち上がった後にぶつかるシード選手の名前が問題だった。
橋本辰。
訓練場の教官。
「これトーナメントする意味ないじゃん・・・。ネコの喧嘩にトラが出てきたよ」
隣りに来ていた倉持ひばり(くらもち ひばり)がぽんと肩を叩く。まあ待ち時間なしで稽古一回つけてもらえると思えば? その言葉に弱々しくほほえんだ。
「あーごめん、それギャグ。いくらなんでも橋本さんは出ないよ」
通りすがりの神田絵美(かんだ えみ)――両手に飾り付けを抱えている――が申し訳なさそうに言った。進藤の顔がぱっと明るくなる。おお! そうなんですか! でも代わりは誰ですか?
「そこに来る奴は、いまごろ仕事サボって新幹線に乗ってる」
「・・・国村さん?」」
肯定の笑顔に肩を落とした。やっぱり稽古つけてもらうことには変わりないのね、との倉持の言葉にうなずいた。