「まさにペテン師の面目躍如ってところね」
疲れた、と言い残してとっとと横になってしまった神足燎三(こうたり りょうぞう)の代わりに二戦士の仲間たちが片付けをしているところだった。高田まり子(たかだ まりこ)は土嚢を一つどけてしみじみとそう呟いた。そこにあるのは木製ではない、全員が地下に携行する本物のナイフである。さっきから片付けている面々が驚きの声をあげているのも、同じようなものを発見しているのだと推測できた。まさに準備は万端だったのだ。
「いや、高田さん。それはきっと本命じゃなかったと思いますよ。ちょっとこっち来てください」
部隊の戦士である黒田聡(くろだ さとし)に呼ばれてなあに? とそちらへ歩く。二つ並んだ土嚢をまたぎ越すまでもないと、奥に位置するものに足をのせた。途端にその土嚢がぺしゃりと潰れた。
「きゃ!」
あ、それもだ、と黒田の声は平然としている。
土嚢の袋に砂ではなくて新聞紙が詰められているのがいくつもあるんです。多分神足さんの本命はこっちでしょう。真城さんが発射台にしようと足を踏み込んだら高田さん程度じゃなくてすっ転びますね、こりゃ。いやあ、としみじみとうなずいた。
「俺が相手しなくて済んで良かったと心から思います。なんとか国村さんで止まってくれればいいけど」