迷宮街の西半分のことなら今日一日でだいぶ詳しくなった。どうしてかというと、昨日の日記に書いたネコを探すために半日以上街を走り回ったからだ。結局誰も捕まえることはできず、しかし問題は無事解決した。星野さんの娘さん、星野由真(ゆま)ちゃんが通りがかって一声かけたらチョボ(猫の名前です)は何の問題もなく飛びついたのだから。俺は今日の朝から、翠などは昨日から、探索者が述べ一五人も駆り出される大騒ぎが結局飼い主の出馬だけで収まるなんて。初めから由真ちゃんが出てくりゃよかったって話ではないのか。あほらしい。迷惑だ。
と脱力しながら訓練場に。とはいえ収穫もあり、今日はチョボ捜索に加わった六人の戦士で紅白に分かれ、三対三の集団戦をやってみたのだ。迷宮街最強の剣士である越谷健二(こしがや けんじ)さんと最強の女剣士である真城雪(ましろ ゆき)さんは迷宮街に来た当初は部隊を組んでいたらしく、すばらしいコンビネーションだった。越谷さんは身長一八〇センチ弱で、一七〇センチ以上ある真城さんをすっぽり覆い隠すことなどできるはずはない。でも、その身体の陰思いもよらないところから真城さんが現れては攻撃を仕掛けてくるのには本当に切りきり舞いさせられた。それは翠もまったく手が出なかったようで、これが実戦経験の差かとしきりにうなずいていた。
真城さんに関する、嘘のような本当の話。あの人は地面に座り込んでいる状態から、二メートル離れた俺にまったく反応させずに鉈を突きつけることができる人だ。速すぎて反応できない、というのではない。その間のコマを抜いたかのように、気が付いたらそこにいたのだ。そして一言「真壁、まばたきのタイミングが単調すぎる。お前なら簡単に殺せるよ」
…・…冗談だよな?


ちなみにもちろん、チョボ探しが楽しくなかったといえば嘘になる