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「あれ、花園さん携帯の番号変えました?」
『お? おお。十月くらいに酔って店に忘れたらしくて。連絡してなかったか』
「相変わらずですね。お仕事はいかがですか?」
『信じられんが六時半起きにも慣れたよ。人間ってすごいな。ところで真壁のことなんだけど』
「啓一が何か?」
『あいつ今学校に行ってるか?』
「いえ、学校辞めて京都に行ってますよ」
『迷宮街か』
「そうです。どうかしましたか?」
『いや、今度うちで流す迷宮街の特番に、どうもあいつみたいな奴が映ってたから気になって。名前も経歴も同じなんだが』
「いやそれ啓一です。11月からずっと京都で切った張ったしてますよ」
『・・・そうか、まあ机に座ってるのが似合う奴でもなかったけど、じゃあ神野とは別れたのか?』
「・・・いえ、相変わらず睦まじいですよ」
『そうか・・・』
「何か?」
『いや、編集で見てるんだけど一人仲良さそうにしている相手がいてな。迂闊に流すと真壁に悪いことしちまいそうだし、かといって結構重要なシーンの背景だからできれば流したいし――で、あいつの番号がわからなかったから、悪いけどお前から真壁に訊いておいてもらえないか?』
「――いや、その女の人はたぶん神野も知ってる人ですよ。笠置町さんて人じゃないですか?」
『おう、それそれ』
「なら問題ないでしょう。いい番組作ってください」
『そりゃよかった。――お前来年からフジテレビだって? ライバルだな』
「そうなんですよ。そのうち花園さんに時間できたら、お酒おごりますからいろいろ教えてください」
『おう。年明けにでも連絡するわ。じゃあな』
「失礼します」