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妹の名前を呼びながらドアを開けたら見知った顔が振り向いた。部隊の仲間の常盤浩介(ときわ こうすけ)だった。最近妹と仲がいい。お邪魔してますという顔に微笑んだ。
「今日私帰らないから、ご飯つくるならいらないよ」
「りょうかい。どこに行くの?」
モルグ、と答えた。一泊千円で利用できる、広間にずらりと二階建てベッドが並んだ宿泊施設である。
「由加里さんと女同士語りあおうって約束――なに、二人ともそのえらくアジのある顔は」
い、いえ、と常盤が視線をそらした。妹もなんでもないとあやふやに笑う。要領を得ないまま笠置町翠(かさぎまち みどり)は扉を閉めた。