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頭の中でいろいろな理由が渦巻く。立ちくらみに似た感覚に意味もなく自分の頬に触った。鎖骨、肩、そこに実体があることを確かめていく。
問題は理由ではなく意図だった。自分しか読者がいないこの日記において恋人は誰から何を隠そうとしたのか。
昨夜、日記が書かれていないことに心配して電話をかけた。呼び出し音にも誰も答えず三件のメッセージ容量は自分の声だけで埋まった。そうしてやりきれずに自分の友達でもある女性に電話をかけたのだ。彼女は熱を出して寝ているんだと教えてくれた。ぐっすり寝ているんだろうから、今夜はそっとしておいてあげたら? と。
そして言った。顔を見たけど意識はしっかりしてたよ。悪いとは思ったけどちょっと愚痴を聞いてもらっちゃったんだ。
再会は訓練場ではないはずだ。誰から、何を隠そうとしたのか? 頭の中で組み立てる必死の言い訳がむなしく闇に吸い込まれていく。