街全体が静かな一日だった。午後から今年の初雪が降り始めたから、というのもあるだろうけど小林さんの送別会(さすがに道具屋に勤めていただけのことはあって、送別会に出くわした人たちがみんな立ち寄っては彼女と乾杯していた)が昨日大変な騒ぎだったから反動でぐったりしているのだろう。今朝は探索に行く目覚ましが普段より少なかったし、明らかに止めたまま寝入っているやつらがいた。
この街では毎日のように人が死んでいる。最近は親しくしていた相手に不幸はなかったけど、昨日は三人も失った。第二期募集のごく初期にテストをパスし、ほとんど同じスケジュールで探索していた人たちももう半分残っていないのだ。親しくしている部隊はもう津差さんのところだけだ。
いつか自分のところにも死神が、という不安は確かにある。けれど去年からずっと探索を続けている部隊も確かにいる。彼らは俺たちと何が違うんだろう? いちど、全員バラバラになって先輩探索者たちの部隊に出稽古に行かせてもらうのはいいアイデアかもしれない。
寒かったこともあって、午後からはずっとモルグで過ごした。翠は真城さんに連れられて昨日ボロボロになったコートの買い物に付き合わされたらしい。『誤字発見! 値札にゼロが五つついてる!』というメールが送られてきて笑った。似合いもしない高い洋服着て戻ってきたら笑ってやろうと待ち構えていたが、存外に似合うので驚いたな。これは翠がどうというよりも真城さんの見立てだろう。この人はいつもおしゃれでテレビ局の取材でも一番映っていたのもこの人だったし。
そういえば街を出る途中の小林さんを見かけた。隣りには結婚される方だろうか? 以前見かけた男性が歩いていた。お幸せに!
せめて、小林さんだけでもお幸せに。