縁川かんな

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「あれさつきちゃんじゃない?」 「どれ?」 「ほら後ろのテーブルの黒いノースリーブ着てる人」 京都の大学に通うために居候している従姉の指すところをじっと見る。後姿しかわからないが、あの変な位置にあるつむじは間違いなく姉だった。しかし。 「どう…

 23:02

おーい、と名前を呼ばれて縁川かんな(よりかわ かんな)は壁の時計を見上げた。おっと、放送が始まったみたいだわとココアのマグカップを持って部屋を出る。障子を開けたら自分と姉以外の一家九人がコタツにおさまっていた。揃いも揃ってミーハーなんだから…

ありがとうございました、と下げられた頭に笠置町翠(かさぎまち みどり)は微笑んだ。昼ごろからすっかりお騒がせだった女子高生たちももう帰るという。ほっとするような、なんだか寂しいような複雑な気持ちだった。 もともと、試合後のこれからこそ彼女た…

真壁啓一(まかべ けいいち)が大きく息を吐き出してようやく、縁川かんな(よりかわ かんな)は自分の身を縛る何かが消えたことに気づいた。それまで行われたのはたったの一動作だった。国村という男が突き、黒田という男はそれをバク転でかわすという。そ…

これだったんだ。あまりの苦しさに涙をにじませながら縁川かんな(よりかわ かんな)は思った。先ほどから一回の攻防が終わるたびにあたりから起こる咳き込む音、なんだろうと思っていたが自分がそうなってようやくわかった。 今回は男性の方から攻めた。右…