木村ことは

 10:32

言いたいことはたくさんあった。つい先日会ったばかりじゃないか。不安ならどうして言ってくれなかったんだ。勝手に決めて押し付けられても困る。だいたいもう次がいるってのはなんだ。それら全てを押しつぶしたのは、恋人の話がまだ続いていたから。初めて…

 24:02

さあ、燃料を追加しよう! と叫んだ木村ことは(きむら ことは)はもう本日は夜明かし決定であると態度で明言しており、補給部隊に命ぜられた二木克巳(にき かつみ)、神野由加里(じんの ゆかり)はコンビニに向けて歩いていた。 元気そうでやっててよかっ…

 17:28

「おや、克巳も早いね」 奥野道香(おくの みちか)の言葉にテレビの前に座っている同級生が振り返って笑った。いま来たところだよ、という彼の名は二木克巳(にき かつみ)といい、大学ではゼミそしてフットサルのサークルでも同期にあたった。この部屋の主…

 20:57

ぱっと見た限り普通の地方都市って感じなんだな、というのが夕方から歩き回った木村ことは(きむら ことは)の印象だった。あえて違いを探すなら車の往来が少ないから車道を平気でママチャリが走っていること、道行く人間のうち肥満者の率が甚だしく低いこと…

ふー。さあ、カレンダーにまたバツをつける日々が始まる。今度は三月九日。ゼミの女性陣の卒業旅行の前、由加里だけ関空出発にしてくれるとのこと。あと二ヶ月とちょっとだ。夕べ越谷さんに訊いたら鞍馬温泉までは自転車が簡単に通行できるくらいの雪だとい…

天気は良く、めぐり合わせが悪い一日。 訓練場で青柳さんをドライブに誘ったら、午後からお経を上げにいくとか。お坊さんの世界でも常連客がいて、名指しで指名されると断れないのだそうだ。翠でも来ないかなとぼんやり待っていると、姉妹でおめかしで出かけ…

 19:18

夕食前の来客はセールスなどではなかったようで母の嬉しそうな声が聞こえてきた。軽い足音に続いてドアをノックする音がする。さすがに一昨日までここにいただけのことはある、勝手知ったるなんとやらだわと思いながらどうぞと声をかけた。 ドアを開けて入っ…

 19:17

「座れたー!」 早速にかばんの中から紙袋を取り出した。中にはお土産に持たされたクッキーが入っている。 「みんないい人だった! 重ね重ねお礼を言っておいてね!」 笠置町翠(かさぎまち みどり)は、隣りに座った真壁啓一(まかべ けいいち)に笑いかけ…