2004-01-26から1日間の記事一覧

これが最後の日記になる。一一月一日から始まって、途中書いてない日があるとはいえ三ヶ月。自分の中でも日記をつけた最長記録だ。いろいろ勉強になった。書いておく、っていうのは頭を整理するためにいいな。この街を出ても、当然ウェブじゃないとしても日…

 21:42

「こんばんはー」 ノックして開かれた扉の向こう、落合香奈(おちあい かな)に真壁は笑いかけた。落合も笑顔を返して部屋に招き入れる。 真城雪(ましろ ゆき)が常に押さえているロイヤルスイートの一室だった。今でこそあるじは木賃宿に住まっているが、…

 21:05

いちばん話したい相手は、一番話したいからこそ長くかかると予想ができたために後回しにしていた。その結果がこれである。笠置町翠(かさぎまち みどり)は微妙に騒ぎの中心からずれたところですうすうと寝息を立てている。 その隣に真壁は腰掛けた。おーい…

 20:12

あ、と視線を移して思った。隅のほうのテーブルで食事を取っている男性、あれは。 話したいな。しかし親しい相手でもないし。そう思っていると近くを北酒場のウェイトレスが通りがかった。手には刺身の盛り合わせ。それはどこの? と尋ねるとあなたたちのと…

 19:35

もうアルコールはいいやと向かったドリンクバイキングのスペースには黒田聡(くろだ さとし)の姿があった。彼はパーティーには参加していなかった。もともとそれほど親しく話をしたわけではなかったし、離れた場所に席を取る彼の隣には明らかに探索者ではな…

 19:15

トイレから戻って騒乱の一角を俯瞰すると、最大級の騒音を発してもおかしくない人間が端のほうでぽつんと座っていた。真壁は手近なテーブルからパエリヤを取り上げ、その前にどかんと置く。ご注文の品です。真城雪(ましろ ゆき)はその言葉に微笑む。真壁は…

 18:40

顔を寄せてきた笠置町葵(かさぎまち あおい)は首筋までがもう真っ赤に染まっていた。普段はゆるくウェーブのかかった髪を今はまとめあげ、ポニーテールにしている。姉とは違い色を抜いていない烏羽玉の後れ毛が妖艶に揺れた。ふっと視線の先には星野幸樹(…

 18:30

その顔色を見て、真壁はいかん、と思った。首筋まで真っ赤な児島貴(こじま たかし)はもうすぐ人語を理解しない状態になり、そして常識を理解しない行動をするようになる。 「いろいろありがとうございました」テーブルに身を乗り出して児島に怒鳴った。隣…

 18:22

笠置町葵(かさぎまち あおい)が席を立った隙にその席を奪った。津差龍一郎(つさ りゅういちろう)は隣にやってきた真壁啓一(まかべ けいいち)が笑顔とともに差し出すコップにビール瓶を傾ける。 「どうでした? 今日潜ってみて」 そうだな、と津差は何…

 17:21

顔なじみの買取担当の娘が手元に回されてきた紙片に目を落とした。そして表情がこわばり、普段なら読み上げる紙片をそのまま差し出した。どれどれ、と進藤典範(しんどう のりひろ)はそれを覗き込んだ。そして娘の絶句の理由を知った。 商社が設置したゴン…

 14:05

「あら」 「おや」 「わーい」 「・・・・」 京都駅前伊勢丹デパートの六階で三人が驚きの声をあげた。真壁啓一(まかべ けいいち)はデパートを歩く人間には似つかわしくなく空身でにこにことその三人を見ている。ちょうどよかった! という笑顔になにがだ…

 09:18

大仰にならぬよう気をつけつつ、少し時間をもらえないかと上司に頼んだ。自分たちの残業申請書に判子を押していた彼はその手を休め、国村光(くにむら ひかる)を見上げる。この場でいいか? できれば別室でとの言葉に立ち上がった。 小さなミーティングルー…