三峰えりか

 11:00

好きか嫌いかで分けるなら好きの部類に入る男だ。それでも娘たちが結婚したい相手として連れてきたとしたら悩むところでありやんわりと反対するだろうというのが、迷宮探索事業団の理事である笠置町茜(かさぎまち あかね)が死体買取の責任者である後藤誠司…

津差龍一郎(つさ りゅういちろう)重体。今もまだ自分の部屋で寝ているはずだ。 第二期の有望な探索者が精鋭四部隊に出稽古に行くという企て、今日は津差さんが先発隊として出ることになった。出稽古先は魔女姫高田まり子(たかだ まりこ)さんの部隊で、こ…

 12:22

「津差さんは、まあ、当然だな」 その言葉が頭にこびりついている。精鋭四部隊の一角、魔女姫こと高田まり子(たかだ まりこ)が率いる部隊の罠解除師のコメントである。精鋭部隊へ第二期で侵攻意欲があり優秀な人間を出稽古させようという試み、まず一人目…

今年初めての探索は悪くない成果で終わった。第二層、延々と続く降り口への道で化け物たちに出会わなかったのが大きい。ほとんど消耗せずに第三層に到着した。まずは真城さんたちから依頼されていたことを済ませる。例の、西野さんと鈴木さんが登ってきた縦…

 09:02

ずらりと試験生が並んでいる。橋本辰(はしもと たつ)はごきりと首を鳴らした。『人類の剣』でありこの国でも十本指に入るだろう戦士であっても長時間の運転はこたえた。昨夜はぎりぎりまで名古屋にいて、妻と子がすうすう寝息をたてる中、ガムをかみながら…

[] 12:13

科学技術ってすばらしい。 目の前で両側に開いていくガラスのドアを見て、三峰えりか(みつみね えりか)は感動のあまり泣きたい思いだった。昨夜はなかった筋肉痛は、今朝ベッドから身を起こすことすら難儀にさせていたのだ。こんなドア開けていられるもの…

新学期が始まったら一度近藤教授に会いに行くことを約束させられ、実家から帰ってきた。確かに近いうちに東京に遊びに行くのはいい考えだな。 北酒場に顔を出したら買取施設の技術者である三峰えりか(みつみね えりか)さんの探索者試験合格を祝うパーティ…

 17:57

斬撃のたびにあげられる気合の声も甲高く感じられる。進藤典範(しんどう のりひろ)は少し苛立って木剣を弾いた。軽くないだつもりだったが、最近自分の筋肉は予想以上に大きな力を出すようになっている。相手の木剣が手から離れ転がった。海老沼洋子(えび…

 19:01

資料室から漏れてくる不審な音で三峰えりか(みつみね えりか)は目を覚ました。寝てしまっていたことに気が付いて、慌てて顔の下に敷かれていた手紙を見下ろす。よだれの跡がついていないことにほっとした。自分は寝言もいびきもないけれどそのかわりよだれ…

 08:28

この迷宮街のアパートを気に入っている一番の点は化石燃料の暖房器具を使えることだ。ポリタンクを地上から三階まで運び上げるのは大変だけど、彼女が目指す探索者の試験は20キロの土嚢を持って歩きつづけるというものだ。18キロのポリタンクで音を上げてい…

葵「大丈夫だよ。豪勢なもの作る気ないし。ネコの手も一つあるし」 翠「にゃー。食器洗うにゃー」 葵「いやそれ準備じゃないから。片付けだから」 翠「にゃー。熊肉でよければ裏山から狩ってくるにゃー」 葵「いやおせちに熊肉使わないから」 今年もあと二日…

 15:28

常盤浩介(ときわ こうすけ)は、読んでいた文庫本から視線を上げた。目の前には白衣を着た女性が一心に書き物をしている。さきほどまで隣接する製品の抽出ブースにこもっていたから、検査結果を整理しているのだろうか。ここは迷宮の出口を囲むように建てら…

 10:47

後藤が勤める会社は商社だったし、何しろ前代未聞の分野だったので製品抽出に適した研究機関はもっていなかった。だから迷宮出入り口に併設されたそれはこの街の構想ができあがった一昨年の冬から急遽、国内各研究機関から人員と機材を集めるかたちで成立し…

 10:12

初日に挨拶した若い娘が謝りながら飛び込んできた。そして自分の姿を見て立ちすくんだ。確か三峰えりか(みつみね えりか)という名前だったはずだ。社内名簿のファイルによれば二五才、神戸の大学院を卒業してすぐ技術者として入社し、昨年の探索開始からこ…

 09:30

カーテンを開けようと立ち上がった足腰がふらつく。今日は本格的に荷造りをする日ということで、昨夜の酒はほどほどにするつもりだった。北酒場で非探索者の友人たちが開いてくれた送別会においてもそれはしっかりと守られた。その後「すこし話しましょうよ…

打撃力★☆☆☆☆ 防御力★☆☆☆☆ 動作速度★☆☆☆☆ 入力への反射速度★☆☆☆☆ 体力★☆☆☆☆ 気力★☆☆☆☆ 投げ技 なし マジックハンド+スタンガン(中距離+即死攻撃) タバスコ水鉄砲(中距離+目潰し3秒) 衣装 ツナギ(白黒の市松模様)/白衣

常に明確に未来の筋書きを予想する。 その筋書きをもとに最適な自分の行動を計画する。 実際の事態の推移はもちろん予想通りにはいかないから、どのようになぜ異なったのかを確認する。 これは大なり小なり社会人の大半が意識していることだったが、その度合…

いわゆる“落ちた”状態にある葛西紀彦(かさい のりひこ)だったが、教官が少し触っただけで息を吹き返した。しかし焦点は定まらず、何度か目の前で手を振った橋本辰(はしもと たつ)はあきらめたようにとりあえずそこら辺に寝かしておけ、と土嚢の見物席に…

いわゆる土俵際にあたる外周部分の土嚢は意識してしっかりと積むようにした。女帝真城雪(ましろ ゆき)が迷宮街に誇るその強靭な足腰で跳躍しても、足場となる土嚢が動いてしまうようではいけないからだ。密集しすぎと思える場所の土嚢を抱えては、攻撃(お…

大盛りください! という言葉はその服装に対して三峰えりか(みつみね えりか)が想像していたものとはアンバランス、しかしそれは嬉しい違和感だった。小さな割り箸を両手で握りしめる顔はにこにこと期待に満ちておりそれは例えば10年前の大晦日に自分がお…

背が高い人のことをあまり羨ましがったことはなかった。三峰えりか(みつみね えりか)は身長144cmであり女性の平均身長ですら160cmに達しようという現代で、その意識は奇異と人には思われるだろうがそれが実感なのだから仕方がない。成長が止まった中学生か…

普段から小さいその身体はさらに縮こまっている。電話の相手は商社の買取責任者だから、その社員でもある三峰えりか(みつみね えりか)にとっては上司にあたった。そして何より、鯉沼今日子(こいぬま きょうこ)も顔を見かけたことがあるが並みの上司とい…