笠置町翠

 23:24

162 名前:公共放送名無しさん :04/01/11 23:24 id:U1p3MAzE あー、ここが北酒場か。 163 名前:公共放送名無しさん :04/01/11 23:24 id:SJJMDm3j さっきからU1p3MAzEはなんだか事情通の希ガス。 164 名前:公共放送名無しさん :04/01/11 23:26 ID:2BhsC+…

 23:27

真壁啓一(まかべ けいいち)が怪訝そうに声を上げた。 「あれ? 真城さんのヒョウ柄って地下用ですよね? カラビナついてるし」 両手をあけながら大量の食料や救急用品などを持ち歩かなければならない地下行動時に使用するツナギには、円形のカラビナと呼ば…

 23:03

13 名前:公共放送名無しさん :04/01/11 23:03 ID:55O83lp2 うおっ。美人ハケーン。 14 名前:公共放送名無しさん :04/01/11 23:03 id:U1p3MAzE ツナギを着て木刀持ったおんな二人。一人はヒョウ柄! 15 名前:公共放送名無しさん :04/01/11 23:03 ID:2Bh…

 23:02

おーい、と名前を呼ばれて縁川かんな(よりかわ かんな)は壁の時計を見上げた。おっと、放送が始まったみたいだわとココアのマグカップを持って部屋を出る。障子を開けたら自分と姉以外の一家九人がコタツにおさまっていた。揃いも揃ってミーハーなんだから…

今日の女帝。 「まさかこんな下賎なところに住まうハメになるとは思わなかったわ」(わずかな着替えだけ持って木賃宿を見上げたセリフ) 今日は探索の日。とても危ない局面があった。何度目かの戦闘で死体食いといわれる小柄な生き物(骸骨やなにかと同じく…

今日も晴れ。訓練場では海老沼洋子(えびぬま ようこ)さんに稽古をつけてあげる。この子は身長一六五センチということで重量も筋力も(戦士としてやっていくなら)絶望的に足りない。というより問題はそれ以前。剣筋は悪くないと思うし視野も広いと思うのだ…

今日はパトロールの日なので早めに書く。今日から津差さん部隊の佐藤良輔(さとう りょうすけ)さんと野沢康平(のざわ こうへい)さんも参加することになった。これで、第二期でパトロールに加わっている人間は八名になる。笠置町翠(かさぎまち みどり)、…

今年初めての探索は悪くない成果で終わった。第二層、延々と続く降り口への道で化け物たちに出会わなかったのが大きい。ほとんど消耗せずに第三層に到着した。まずは真城さんたちから依頼されていたことを済ませる。例の、西野さんと鈴木さんが登ってきた縦…

 22:17

頭の中でいろいろな理由が渦巻く。立ちくらみに似た感覚に意味もなく自分の頬に触った。鎖骨、肩、そこに実体があることを確かめていく。 問題は理由ではなく意図だった。自分しか読者がいないこの日記において恋人は誰から何を隠そうとしたのか。 昨夜、日…

台風一過。といいたくなるほどいい気分だ。昨日の朝、原因不明の体調不良に見舞われたけれど一日かけて水を飲んでは吐いてを繰り返した結果、かなりいい感じに身体をクリーンにすることができた。やっぱり運動しないで食べてばかりいたのが原因だと思う。難…

 19:21

エレベーターに乗ると人は階数表示を眺めてしまう――そんな言葉を以前テレビの中から聞いたことがある。最近では『エレベーターに乗ると階数表示を見てしまう人が多い』という法則もまた有名になり、あえて他を、前方か、足元か、携帯(これは多い!)か、あ…

 11:24

どうして子どもたちになつかれるのだろう? とは笠置町葵(かさぎまち あおい)の積年の疑問だった。子どもの相手がうまいわけでもなく笑顔がいいわけでもなく、それでも近所や親類の子どもたちにはよくなつかれた。今日も正月とて集まってきていた子どもた…

昨日は夕方からずっと雨でどうなることかと思ったけれど、今日はいい天気! こんなことなら黒田さんたちとご来迎を拝みに行けばよかった。それでも木賃宿の屋上から眺める朝もやの京都市街は非常にきれいだった。洗濯物も乾きそうだし。 本日もまた示威部隊…

葵「大丈夫だよ。豪勢なもの作る気ないし。ネコの手も一つあるし」 翠「にゃー。食器洗うにゃー」 葵「いやそれ準備じゃないから。片付けだから」 翠「にゃー。熊肉でよければ裏山から狩ってくるにゃー」 葵「いやおせちに熊肉使わないから」 今年もあと二日…

 22:34

ふううううううと息を吐く声が聞こえる。なんとなしに妻のその声を耳に留めながら、笠置町隆盛(かさぎまち たかもり)は目の前の男のコップに焼酎を注いだ。彼は奥島幸一(おくしま こういち)という名で、笠置町夫婦と同じく政府から月10万円の助成金とと…

 12:32

腹減った腹減ったと唱和しつつ示威部隊が地上に戻った。留守番役の太田憲(おおた けん)、落合香奈(おちあい かな)がお疲れ様と出迎え、ビニール袋の中から折り詰め弁当を取り出した。そして大きなお鍋。これは落合が北酒場のコックに頼んで作ってもらっ…

 20:57

ぱっと見た限り普通の地方都市って感じなんだな、というのが夕方から歩き回った木村ことは(きむら ことは)の印象だった。あえて違いを探すなら車の往来が少ないから車道を平気でママチャリが走っていること、道行く人間のうち肥満者の率が甚だしく低いこと…

 7:42

高崎和美(たかさき かずみ)は階段の上に男の影を見つけて顔をこわばらせた。木賃宿と呼ばれる彼女の勤め先、三階部分は基本的に男子禁制なのだ。四階から上に行くために通る可能性は確かにあるが、男性はエレベーターを使用するように暗黙の了解ができあが…

今年も残すところあと三日。日記をつけ始めたのが11月1日だったから、もう二ヶ月も続いたことになる。最初の頃にあった「明日死ぬかもしれない」という切迫感はいまはもうない。別に死なないと思っているのでもなく、死んだら死んだで仕方のないことだと受け…

 13:25

妹の名前を呼びながらドアを開けたら見知った顔が振り向いた。部隊の仲間の常盤浩介(ときわ こうすけ)だった。最近妹と仲がいい。お邪魔してますという顔に微笑んだ。 「今日私帰らないから、ご飯つくるならいらないよ」 「りょうかい。どこに行くの?」 …

 8:27

夢オチだったのか、とぼんやりとした世界の中で思った。明日死ぬかもしれないと思って眠れなかった夜、皮膚を裂く刃物の痛み、生き物の死体を削り取る刃とどろりとした鬱血が流れ出す感触、親しかった人間の死に「死んじゃったのか」としか思わない異常性・…

今年の探索はすべて終了。昨日も書いたように今日は第二層までの探索とエディの部屋だけで早めに終わらせた。もう年末だからだろうか? エディの部屋も新参(といっても、俺たちと一ヶ月弱しか違わないんだけど)の部隊が二部隊いるだけだった。彼らは地力が…

京都の冬は厳しいというけれど、まだそれほどは実感していなかった。理由はいくつかあると思う。去年の寒さなんてそれほど意識していないというのが一つ、明らかに東京にいた頃より筋肉の量が増えたので気温に左右されにくくなったというのが一つ、そしてな…

 20:32

「あ、また転んだ」 北酒場には時ならぬ特設リングが出来上がっていた。その中央で行われている見世物を眺めながら落合香奈(おちあい かな)は呟いた。派手な音と一緒に歓声が沸きあがる。いま転んだのは高田まり子(たかだ まりこ)の部隊の前衛で、神足燎…

 18:20

朝会の列で最後尾を譲ったことがなかった。小学校に入学した時点で143センチ、中学校入学時には176センチ、中学生活で192センチまで伸び、あとは大学までかけて現在の203センチになりそこで止まった(正直ほっとした)。そんな珍しい人生を過ごしていた津差…

 12:30

「はい翠です」 『真壁です』 「うん、どうしたの?」 『いまどこにいる?』 「伊勢丹。孝樹にいちゃんと」 『お、おお! ということは?』 「下川さんと」 『なんだ、二人きりかと期待したけど――ってことは、水上さんも夕飯一緒に?』 「ううん、京野菜食べ…

気分が悪い。 原因はわかっている。津差さんの部隊の新しい治療術師、幌村幸(ほろむら みゆき)くんと話したからだ。彼は俺より一つ年上、一浪して東大だそうだ。努力の結晶と安泰な将来の可能性を蹴って迷宮街に来た彼はそういった経歴を隠すでもなく誇る…

『ノーモアクリスマス!』 パレードは首謀者の真城さんが突然「いやホントごめん! マジで! あとよろしく!」と言いながら裏切ったものの、参加人数24人と犬3匹という立派な成果をあげた。馬鹿ばっかりだ、この街。先頭は真城さんに選んでもらった高級服に…

翠の一言にドキッとさせられる。 最近北酒場でよく噂されているのよねーとのことだった。この娘は生まれか家庭環境かわからないけれど非常に耳がいい。しかも入ってきたもの全てにとりあえず気を配っているらしく、離れたテーブルの会話などを突然耳打ちして…

 23:17

真壁啓一(まかべ けいいち)を笑顔で見送ってから、神田絵美(かんだ えみ)は真城雪(ましろ ゆき)の猪口に日本酒を注いだ。迷宮街の女帝はすでに相当酔っており真っ赤な顔でにこにこと自分を見つめている。なんだってわざわざ引っ掻き回すようなことを言…